2018年12月1日土曜日

どうしてオウムから逃げ出したか

オウム法廷6(降旗賢一)より引用。
p133 -136裁判官補充質問(三上裁判長)




−教団を脱走したときの気持ちをもう一度言ってほしい。

「グルのマハームドラーに耐えられない、というか、ここまで先生に尽くして来ているのに<ここまで言って、突然また泣き出す>なぜ、わかってくれないのか。寝ずにいろんな選挙活動に携わったりする中で、あれもこれもと、難問のワークを支持され、ことごとくやるがあまりにも認めてくれない。それと結果が…(聞き取れず)でここまできたか、と疑問を感じ、それが積み重なってきた、というか、本当に自由がないからです。本当は逃げたくなかった」




−麻原への思いだが、そういうことを自分が繰り返すのでは、と考えていたか。

「それは考えていなかった。というよりも麻原が選挙に落ちたら大乗の思想でいく、と言ったからです。そのとき、後ろに飯田エリ子がいて、どういう救済になるかわかるか、と聞き、答えられないでいると、大乗の思想でいこう、と思うんだ、と(麻原が)言った。非合法活動やヴァジラヤーナでなくていいんだと言っていたので、もっとおかしくなると思っていなかった。かえって、選挙に落ちたら、在家信徒の信がなくなり、オウムが潰れるんじゃないか、と思っていた」




−麻原への信(がなくなった)。評価されない、やっていることはまやかしの疑いがある。ほかにあるか。

「マハームドラーに耐えられない、ということです…」




−自分のやってきたこと、教団の違法行為を話すべきだ、と考えたのはいつか。

「本当に考えたのは、3月31日、飛行機の中です(中国に行っているとき)。」




−投書をしたりするのは、駆け引き。自分の身を守る動機からで、教団に今後同じことをさせない、というのではなく、自己保身だね。

「はい。」




−もっと早く、自分たち教団がやっていることを書いたら、あれだけの犠牲者は出なかったろう、という思いにとらわれる人は多いが。

「私もそう思います」




−どうしてそれに思いが至らないのか。

「勇気がなかったんです」




−教団を抜けてからも、いくつか機会があったでしょう。どうしてそれができない。

「そこまで考えが至らなかった」




−生い立ちや、入信の経緯、それにほかの信者にも聞くと(入信動機が)自分が救済されるから、という話を聞くが、それによって、ほかの人はどうなる、という思いが希薄に思えるがどうか。

「………そうですね」




−言い方はきついが、自分が幸せになれば、ほかの人はいいのか。そういう気がしてならないのだが。

「…(無言)」




−今、振り返ってみてどうですか。

「おっしゃる通りだと思います」




−その辺、自分がどうしてそうなったか分析できるか。

「自分なりにしているつもりです」




−現在まとまっていないか。話ができるならしてください。

「自分の原体験があると思う。小さいときから自立するのが早かった。だれも助けてくれるわけではなかった。いざというとき、お金儲けにかけてはどうにかなる、と世間をバカにしていた。それに本当の親をみていない、会いたい、という気持ちもあった。現実に、自分しか信用できない。一種の排他的な考えがあったかもしれない。友達を選ぶにしても自分が犠牲的でもあったし、途中で相手が離れていってしまうこともあった。それに、養子といっても一人っ子で、たとえ人は一時的に理解しても、必ず崩れるものだ、悟りといっても、一つの状態で崩れるものだ、ということが恐ろしかった。兄弟が多い家族なら、兄弟喧嘩の繰り返しで教えられることがある。それがなかったので、自分がわからなかったところがあったんだな、と思う。学校を卒業してからの人生経験は、プラスでもあるが、マイナスの面もあって、次々に自己中心的なものがあった、と思う。狭い部分、もう一度見つめ直さなければダメだ、と。…他にも味方があるかもしれないが、言葉としてはっきりした表現ができない。また改めてしたい、と思います。




−では、いずれまたね、別の考えが出てくるかもしれない。そのときは話してください。



「……(黙ってうなずく)」

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